防音室について

防音室について

室内でピアノなど楽器のレッスンをするならば、近隣に音漏れの迷惑がかからないよう配慮する必要があります。
キーボード、エレキギター、エレキベース、電子ドラムなど電子楽器であれば、プラグでつないだヘッドフォンで演奏をチェックできますから、
遮音の気遣いは一切要りません。
しかし、そういった電子楽器は、下手が適当にプレイしても、電子の力で演出されたそこそこいい音が出せてしまうため、
「生の音に対する感性を磨くことができない」との指摘もしばしばなされるところです。
また、「オレって、けっこうイケてる?」との香ばしい勘違いにもおちいりやすく、上達のさまたげになるとも言われます。
本腰を入れて感性を磨き、本気で才能を開花させようとするならば、アンプラグドのアコースティック楽器で研鑽を積むのが王道ということになります。
すると、やはり、近隣に音漏れの迷惑がかからないようにする配慮は、どうしても必要です。
 
近隣への音漏れを避けるための手段として、もっとも手軽で費用も安く済む選択肢が「防音室」です。
各メーカーがレディメイド製品としてリリースしている定型の防音室を導入できる条件が整っていれば、50万円台くらいから導入することができます。
さらに極論すれば、手作りで防音室を作ってしまう、あるいは、自室を防音室にしてしまう強者もいます。
ホームセンターなどで吸音材や遮音材を購入してきて、自分でアレンジして壁、床、天井に張っていくのです。
このやり方だと、費用は10万円程度まで抑えられるようです。
こうした「手作り作戦」でうまくいった例は、ネット検索で何件か見つかります。
しかし、チェックしきれないほどたくさん見つかるわけではありません。なぜなのか。
その理由は、綿密に調べたわけではありませんが、おおよそ推理できます。
 
そもそも、そんなに多くの人が自力で防音室を作ろうとは思わない
 アコースティック・インストゥルメントの素養と、日曜大工の素養を同時に兼ね備えた人なんて、そうそういません。
うまく防音できるか、条件がきびしい
 ネットでいくつか見つかる成功例は参考になるとしても、その例とは自分たちの置かれた環境・条件は違います。
 同じことをしてもうまくいくとは限らない。結果、チャレンジしたけれども成功しなかった例も水面下に多数あるのではないかと思われます。
なんだかんだいって、レッスンの場はある
 音大通いだったり、音楽学校在籍だったり、そうでなくても、最寄りの駅ビルのカルチャーセンター的なサービスに参加しているなどして、
 レッスンの場に困っていない人も多いでしょう。それはそれで、もちろんお金はかかりますが、わざわざ自宅を改造するよりは……というお話ですね。
 
ということで、防音室の自作は、置かれた立場、環境や自分の腕前、ないしは技術力、そして幸運に、よほど恵まれないと難しいと言えるでしょう。
プロの業者に依頼するのが早道で、間違いがありません。
 
屋内に設置する防音室は、比較的簡素でDr値が低めのものでも、かなり有効です。
JR目白駅を降りて、学習院大学の反対方向に目白通りを少し行って、ちょっと入ったところに「ギタルラ社」という古典楽器の工房兼店舗があります。
そこに行ったとき、たまたま女性の演奏家が、店内の防音室の中でチェンバロの試奏をしていました。
その防音室はガラス面がかなり広めで、演奏家の姿がよく見え、チェンバロの音もかなり聞こえました。
二重にしてもいないガラスの遮音性はそれほど高くなく、ピアノに比べればはるかにか細いチェンバロの音が聞こえたということは、
遮音性能があまり高くない防音室だったと考えられます。だいたいD-30からD-40くらいだったでしょう。
それでも、店の扉を開いて店内に入るまでは気付かなかったのです。店外への音漏れはほぼゼロになっていました。
ちなみにギタルラ社は目白通りから細い脇道に入って少し行ったところにあり、周辺はかなり静かです。
にもかかわらず音漏れがなかったということは、チェンバロやギターの音であればその程度の遮音性能でも十分だということです。
むしろ、低めの遮音性のおかげで、演奏家の試奏が聞けてラッキーでした。
 
遮音性能が低めの防音室なら、費用も安いでしょう。ただ、音量の大きい楽器になると、それ相応の遮音性能が必要になるのはやむを得ません。
ピアノの場合、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造ならばD-50程度、木造や鉄骨造ならばD-55程度が目安になります。
ヴァイオリンや木管楽器もだいたい同じくらいです。
こういった遮音性だと、防音室の外にふつうの人の話し声程度の大きさで音漏れがありますが、屋内である以上、家屋の壁がさらに外側にあるので、
近隣に迷惑な音漏れはほとんどありません。
最初の方で電子楽器の例として挙げている電子ドラムですが、実は意外とうるさいのです。
バスドラムの低音は「音」としてより「振動」として漏れやすく、スティックでドラムをたたく「カチカチ」音もかなり大きい。
そのため、実はピアノよりも高い遮音性能の防音室が必要になります。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造ならばD-55程度、木造や鉄骨造ならばD-60程度が目標になってきます。金管楽器もこのくらいで大丈夫です。
ドラムや太鼓がいちばん大音量のカテゴリーになります。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造ならばD-60以上、木造や鉄骨造ならばD-65以上が必要になってきます。
上記のように、鉄筋コンクリートや鉄骨造などについて場合分けしていますが、
家屋の工法や建材により必要な遮音性能が左右されてくる点には注意しましょう。
そして、必要な遮音性能を左右する要素は工法・建材だけではありません。
たとえばサッシのガラス面が大きいと遮音性が低くなるので、防音室側のDr値を高めにしなければなりません。
それから「暗騒音」の問題があります。暗騒音とは、はっきり意識できる騒音以外に、家屋周辺で背景音のように聞こえる……というか、
「聞こえないようで実は聞こえている」騒音のことです。周囲の家々や、大小の道路から発せられている音が小さく響いている状態です。
暗騒音は場所によって異なります。暗騒音が大きめであれば、小さな音漏れが目立たず、意識されにくくなるので、
防音室に必要な遮音性能は低めでも大丈夫です。
逆に暗騒音が小さい、言い換えれば静かな地域だと、小さな音漏れでも意識されやすいので、遮音性能を高めにしなければなりません。
さらに暗騒音は時間帯によっても変動します。一般的には、夜22時を過ぎると暗騒音は低下します。
22時以降にもレッスンをするのであれば、やはり遮音性能を高めにする必要があります。
 
家屋の工法や建材、デザインの面を評価して防音室に必要な遮音性能を考えていく作業、
そして、暗騒音など家屋の周辺環境を評価して防音室に必要な遮音性能を考えていく作業、これらはいずれも、一般人には難しいでしょう。
この点からも、防音室の導入はプロの業者に依頼して行うのが、早道、かつ無難です。
防音室の価格は、レディメイド製品の定型型で50万円台から、設計から起こして施工するカスタムメイドの製品だと100万円台からになります。
価格は遮音性能の高さに比例して高くなり、D-60以上の高遮音タイプのモデルになると、カスタムメイドのタイプで300万円台になってきます。

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